文化や環境の異なる海外で子どもを育てる。
実際に子育て中のママならではの視点で、スペインでの子育てをリポートしてもらいました。
スペインでの子育て体験
太田 一実
海外で生活をする、という経験は、各人の持つその国や文化に対する知識、興味、その国で暮らすことになった経緯などにより、多様に異なるであろう。私は、海外で生活をして新しい価値観や文化に触れることはもともと好きだし、そこでの苦労や驚きも楽しむ方である。
しかし、海外での「子育て」となると話は別、ということを実際にスペインで子育てをして実感した。
特に私の場合、夫がスペイン人という理由でスペインに移住したため、生後4ヶ月になる長男を連れて初めてスペインに来たとき、スペイン語の知識はゼロ。スペインの生活時間、食事、清潔感、人との距離感などなど、文化や習慣に関する知識もほぼゼロ。旅行で来ただけならば、あるいはこの地で夫と二人で生活するだけならばさまざまなカルチャーショックも楽しめるはずなのだが、乳児を育てるとなるとストレスにしか感じなかった。義両親は初孫をとても可愛がり、はるばる日本からきた私を暖かく迎えてくれて非常にありがたかったが、何よりも言葉が通じない。誤解して大笑いすることもあったが、お互いにもどかしい思いをすることもしばしば。
そしてなりより、スペインの「当たり前」が私自身が生まれ育った環境(つまり日本)での「当たり前」と異なることが多すぎて、びっくり、ハラハラ、心配してばかり。スペインでは離乳食にオリーブオイルを入れるというが、うちの子は半分日本人だけど大丈夫なのか!?なんでハイハイしている子どもがいるのに大人たちは家の中を土足で歩くんだ!?乳幼児がいるのに夕食の時間が22時からってどういうこと!?
スペインにしばらく住んでみて、どうしても合わなかったら日本に戻ろう、と考えていた。それから約6年。現在4児の母である。少なくとも子どもたちが巣立つまでは、スペインで生活してもいいかと思うようになった。
その大きな理由の一つはスペインで出会った友人たち。特にスペイン人と結婚をして子育てをしている日本人やその他の国の人々と話していると、自分の生活にどれだけスペインの文化を取り入れて、どれだけこれまでの習慣を残しながら生活をすると居心地良く、楽しく過ごせるかという参考になる。つまり、スペインと日本のいいとこ取りが上手くなる。もう一つの大きな理由は、少しは上達したスペイン語力。日々の生活の緊張感が少し和らぎ、子どもの怪我など緊急事態でもどうにか対応できるという安心感にもつながる。
もともとスペインが大好きでスペインに憧れて現在に至るわけではないが、少しずつバランスを取りながら、スペイン式でも日本式でもない「自分式」の生活スタイルを作り上げることで、居心地良く過ごせるようになってきた。「違い」を拒絶・否定したくなる時もあったけれど「違い」を少しずつでも受け入れてみる柔軟性と好奇心、そして自分の持っている「拘り」を手放してみる勇気が大切なように思う。今は、子どもたちの成長とともに、自分自身の人間として親としての成長を楽しんでいる。
「夏には日没の21時半ごろまで公園やビーチで遊ぶ子どもが多く、早く寝ないと、と心配になっていました。」
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