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2022.06.19開催

 オンライン講演会「海外での子育て~コロナ禍に子どもの発達を支える~」

             Q&Aより一部抜粋

 

当日は事前に申込者から寄せられた質問に講師の広瀬先生がQ&A形式でお応えくださいました。ここに一部紹介します。

 

講師:

広瀬宏之氏(小児精神・神経科医)

平成7年、東京大学医学部医学科卒後、同大学附属病院小児科、国立成育医療センターこころの診療部発達心理科、フィラデルフィア小児病院、横須賀療育相談センター開発準備室を経て、平成20年より横須賀市療育相談センター所長。

平成19年~令和元年まで13年に渡り、年1回ジャカルタを訪問し、現地在留邦人を小児発達・健康・子育て等の面から支える。コロナ以降も継続して、毎年オンラインで現地在留邦人向け子育て懇話会を実施。

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質問7   

学校以外で、同年代の子と遊ぶ機会がほとんどありません。コミュニケーション能力等への影響も心配で、親として家庭で出来ることはありますか?

 

質問10 

外に出るのを嫌がるようになってしまいました。外に興味を持つまで気長に待ってよいのか、あるいは多少強引にでも外に連れ出した方がよいのでしょうか。

 

質問12 

幼児期の集団生活こそ学びの場と思うが、オンライン保育は子供たちにとってどうなんだろう、と思ってしまう。

 

質問16 

ひらがなをやりたがらない子供に対して自宅でもできるサポートを教えてほしい。

 

質問19&20 

5歳女の子、自閉症です。駐在や転勤を繰り返す場合、帯同をすると環境がころころ変わるので親も子も適応できるか心配です。

息子に発達の心配があり(ASDの傾向)、帯同自体を悩み始めています。赴任先の国(インドネシア)は、教育において療育が理解実施されているとは言い難いです。今の環境で良い資源が得られている反面、父親不在による寂しさや、欠ける部分も感じられ、なかなか答えが出ない状況です。

 

質問24

幼稚園卒業と同時に不登校になった子が毎年、周りに沢山います。今後このような子達が助かる情報があったら、助かります。

​​Q&A>

質問7

Q)コロナ禍以降、特に兄弟だけで遊ぶ時間が増え、学校以外で、同年代の子と遊ぶ機会がほとんどありません。感染リスク、濃厚接触リスクを考えると遊ぶ機会を増やす事もなかなか難しいです。コミュニケーション能力等への影響も心配で、親として家庭で出来ることはありますか?

A)子どもにとって人間にとって、その年代年代で一番大事な存在というのは変わっていきます。最初は家族、特に母親。それがいつの間にか気付くと家族より友達となっていくわけですね。だんだん家族は後回しになっていくわけです。でも、小さい頃というのはやっぱり家族が一番大事、安心安全を与えてくれるのは家族。いろんな家族がありますが、それでも子どもにとってはいろんな安心を与えてくれるのは家族。

きょうだいがいるというのは、これはもうラッキーですね。もちろんきょうだいがいると喧嘩もよくあるわけです。きょうだい喧嘩というのは、社会性というか、いい練習材料になるわけです。喧嘩をしてもいつの間にか仲直りをする、関係が切れないというのは、肉親ならでは。喧嘩をしても大丈夫なんだという人間関係を学ぶのは、家族やきょうだいの一番いいいところです。

なので、親として家庭でできることというのは、一つは安心安全ということで、そばにいて、寄り添う、そこに居てあげるということ、それが一番大事です。それから、お子さんと遊ぶこと。どんな遊びでもいいです。家の手伝いでもいいです。PC・スマホ・タブレット・ゲームなどのいろんな電子ツールをお子さんと一緒に楽しむということも、1つできること。子どもと一緒にテレビを見る・YouTubeを見る・ゲームをする。もちろん、インターネットとかPCとかバーチャルではなくて実際のゲーム、昭和の遊びですね(トランプ・かるた・すごろく・オセロ・人生ゲーム・モノポリーとか)、あるいは身体を使った遊び(取っ組み合い・おしくらまんじゅう・お相撲ごっこ・おっかけこ・ジャングルジム・泥遊びなど)ありとあらゆる遊びができるといいですね。後は家の手伝い(掃除・ごみ捨て・料理・お父さんの下着をたたむ)、いろんなことをやってもらってもいいです。勉強は好きな子はやってもらっていいけれど、親と子のかかわりを意識してやってみる、それしかできることはないでしょうね。

人と人との関わり、機械を通じてでもいいと思います、Zoomで友達と喋ったり、大きい子だったら対戦型のゲームやチャットしながらゲームをしたり等もそれはそれで1つの遊び方かもしれない。どういう形でもいいので、一方通行で親が子どもにお説教するのではなくて、親と子どもで一緒になって遊ぶ。

もう一つ、僕は職業柄、言葉の発達がゆっくりのお子さんによく出会いますが、よく保健師さんに言われるのは「絵本の読み聞かせをすると言葉が増えますよ」と。ところが言葉が増えない子というのは、絵本の読み聞かせをしても興味がないのであっち行っちゃうわけですね。だけど専門家に言われたからと、嫌がる子どもに無理やり絵本の読み聞かせをする。何の練習になっているかっていうと、親の言うことをスルーする・聞き流す練習をしている、早く終わらないかな~って。

 

遊ぶときは親の興味や関心ではなくて、子どもが今何に興味や関心を持っているか?ということで遊んであげることが大事です。

 

電車・ポケモン・鬼滅、何でもいい。子どもから教わるくらいのつもりで「これなぁに?」と、子どもが興味や関心のあることを題材・テーマとしてコミュニケーションや会話をする。子どもが興味や関心を持っていることに親がはまり込んで付き合う、寄り添うということが、コミュニケーションを伸ばすことには大事です。

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質問10

Q)コロナ禍で外出規制が長かったことから、外に出るのを嫌がるようになってしまいました。外に興味を持つまで気長に待ってよいのか、あるいは多少強引にでも外に連れ出した方がよいのでしょうか。

A)僕なんか典型的なインドア人間で、家の中にいくらでもいられると思っていたんです、コロナになる前までは。2020年の最初のコロナのときは、外に出て向こうから人が来るだけでうつるんじゃないかみたいな、精神的な不安があったわけです。

でも、今はやっぱり外に出た方が楽しいよっていうことですね。ところが、ここでご質問にあるようになかなか部屋の中にいて楽しい場合は外に出たがらない。

これは一緒に散歩をするしかないと思います。そのうち学校や幼稚園、社会生活が始まったりして外に出る機会は必ず来ますので、待っていてもいいと思います。ただやっぱり、家族で外に出るということを、ちょっと誘ってみると。多少強引にでも、多少強引の程度がどれくらいかによりますけど。

親が家でゲームばかりしていたら子どもも真似をして難しいので、親も含めて「日光浴しないと体に悪いんだよ」「外に行った方が健康にいいよ」と連れ出す。本当に嫌がる、不安・恐怖・怖いという状態なのを無理やりやると、それはトラウマになるので、それはやめた方がいいと思います。昼間が嫌だったら夜でもいいよとか、どんな形でも少し連れ出すチャレンジをしてみてもいいのではないかなと思います。

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質問12

Q)4月に中国へ入国したので、既に閉鎖されており、子供達は幼稚園のオンライン保育すら参加できていない。幼児期の集団生活こそ学びの場と思うが、オンライン保育は子供たちにとってどうなんだろう、と思ってしまう。先生はどう思われますか?

A)まぁ、ないよりましっていう感じですね。非常に少なく見積もって言えば、ないよりまし。

 

ただ今日のZoomの講演もリアルにやったら喋り手は盛り上がりますが、現地開催や対面式の開催に勝るものはないですね。やっぱり情報量としては半端ないですよね。オンラインだと雑談できないですね。雑談、おしゃべり、子どもたちにとってのくだらない遊びっていうのはやっぱりかけがえのないものです。

 

けれども、何にもなく家で親御さんとしかコミュニケーションできていないよりは、ないよりもまし。これは作っている幼稚園の人たちはすごく大変だけど、細い絆ですが、社会との細い絆っていうのは21世紀のインターネットのある時代ですので、できる範囲で活用できるといいだろうなと思います。

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質問16

Q)帰国後の生活を見据えた家庭内での指導について。ひらがなをやりたがらない子供に対して自宅でもできるサポートを教えてほしい。無理強いして嫌いになることも避けたいが、帰国後日本の教育についていけないことも不安視しています。

 

A)本帰国したときの日本の教育についていけないことはものすごく心配だろうと思います。年齢が上がるほど子どもは自分の学習スタイルは変わらないので、さぼり癖がついていればなかなか抜けません。

 

僕が小児科医になった25,6年前くらいは文字の学習は1年生になってするものだというのが僕の常識でした。10年くらい前になって年長さんで平仮名がマスターできているというのが常識になってきて、最近は年中さん。どんどん早くなっています。けれど、人間の脳が、子どもの脳が、どんどんPCのようにアップデートして機能が優れていくかというとそんなことはありません。原理原則は、ひらがなは学校に入って習得すればいいです。

 

一番やって欲しくないことは、アレルギー・嫌いになることですね。無理強いして嫌いになったらかえってまずいです。親からスパルタでしごかれて嫌だった記憶が、学習とリンクしちゃうと本当に悪いです。遊びながら楽しみながら、やりたがらない場合はちょっと後回しでもいいと思います。

やりたがるお子さんに対してどんどん教えるのは全く構わないと思いますけど。子どもは興味や関心があれば乗って来ますので、キャラクターの名前や図鑑、日本に家族がいればひらがなで手紙を出してもらうとか、ひらがな・勉強ということに興味や関心をくっつける。どうやればその子がひらがなを好きになるかな?興味を持つかな?アニメのキャラクターの名前を覚えるなんていうのは一番いいです、僕は鉄ちゃんだったので電車の駅名で漢字や地図を覚えたり、興味のあることとリンクをさせるということがあまりやりたがらない学習を進める基本のコツです。

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質問19&20

Q)5歳女の子、自閉症です。今後、駐在や転勤を繰り返す場合、帯同をすると環境がころころ変わるので親も子も適応できるか心配です。あまり環境を変えない方が良いのでしょうか?

Q)来月3歳になる息子ですが、現在コロナの影響もあり、夫のみ単身赴任しています。いずれ帯同を考えていますが、息子に発達の心配があり(ASDの傾向)、帯同自体を悩み始めています。任期としては小学校入学前には帰任することにはなると思います。現在は日本で保育園(加配あり)・少ないですが療育を併用しています。赴任先の国(インドネシア)は、教育において療育が理解実施されているとは言い難いです。今の環境で良い資源が得られている反面、父親不在による寂しさや、欠ける部分も感じられ、なかなか答えが出ない状況です。どちらをとってもメリットデメリットあるというのは理解していますし、決定は最終的に親がするものというものは重々承知ですが、何かアドバイス等あれば、よろしくお願いします。

 

A)この2つの質問に大事なことは、2つあります。年齢の要素と家族が一緒にいることのメリットです。

年齢の話で言うと、発達障害(自閉症)の場合は、日本の国内の転勤でも同じですが、僕がお伝えしているのは小学校いっぱいまでの転勤はまぁ「あり」です。ただ中学校以降はあまり学校や地域は変えない方がいいです。

大きくなっても障害が残る場合は、義務教育が終わった後の進学や就労はかなり地域のリソースを活かしていかないといけないわけですね。自閉症などの場合は高校までは養護学校がありますが、養護学校出た後どうするのか?就労するのか?就労支援施設に行くのか?学校に行くのか?中学あたりから高校や高校以降の進路を見据えた情報収集を少しずつしていった方がいい。お父さんが転勤族の場合は、中学校くらいになったらどこかに拠点を定めた方がいいのかなと思っています。海外でも一緒。お子さんは意外と大人よりも適応できる子が多いです。環境を変えることが5歳の自閉症の女の子の場合、絶対だめだということはないです。

 

ただ、相談先、支援をどれくらい必要とするか?というところです。

発達障害の支援・療育の場合、例えば療育がない完全になくなると成長発達しないかというとそういうことはないです。療育があればあるに越したことはないけれど、僕がインドネシアで見た場合、ちゃんとみなさん成長しています。日本に居たらもっと伸びたか?といえば、全員が全員日本にいた方がよかったということはなかったと思います。

 

ただ療育というよりも、お母さんの困ったときの相談先が、日本よりやっぱり悩ましいですね。シンガポールみたいに日本の小児科医がちゃんといて相談できる環境であれば全然問題はないと思います。

 

ただ、今はインターネットの世の中で、ネットでいろいろ調べたりオンラインで相談できたりといろんなことで相談できるので、ご主人が単身赴任してお母さんが日本に残っていわゆるワンオペで子どもの相手をする。お母さんが煮詰まったときに、ご主人に愚痴をこぼしたりご主人と一緒に考えたり、2人で考える。親御さんは親という子育てをする専門家ですので、父親と母親と2人で一緒に考えるということは、やっぱりお父さんが話を聞いてくれるということは大きいと思います。

 

それはシュミレーションして、お父さんがインドネシアに行ってお母さんが日本に居てワンオペで大丈夫その方がむしろ安心安全なのか、やっぱり困ったときにお父さんがいて療育とか相談とか保育の環境とか日本よりは劣っているけれど家族が一緒にいることの安心感を比べるしかないかなぁと思います。

 

やっている立場からすると、療育なんてなければないで何とかはなります。受ける方にしたら療育が全然ないところに行くのはちょっと怖いな~というのは分かります。だけど、意外と何とかなります。

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質問24

Q)タイで、幼稚園卒業と同時に不登校になった子が毎年、周りに沢山います。小学校に入学許可がおりなかった為に小学校に通わずにいたり、不登校のお子さんです。タイは情報に恵まれていますが、他国の場合、日本人学校にいても不登校は、頼み込まないと情報も宿題も貰えません。それでも、宿題をくれない先生もいます。落ち込んだ子は、通学許可もなかなか貰えません。今後このような子達が助かる情報があったら、助かります。国により、日本人会が機能していないところもあります。ですので、タイの日本人会の情報に助かっています。今後、別の国の日本人会でも情報を流して頂けましたら、本当に助かると思います。

A)そうですね、これは頼み込まないとだめです。学校の先生もいろんなご事情があるので、不登校の場合は親御さんが学校にアプロ―チしないと学校の先生は放置してしまうこともあります。

 

日本人会もいろいろですが、今は家族で赴任する時代で、家族で赴任するときにお父さんが心置きなく仕事に行けるためにはお母さんやお子さんが落ち着いている、家族が安定するということがお父さんの仕事に直結する。赴任する駐在員、家族も含めての日本人会だと思います。

 

親御さんは学校に対してアプローチができる場合は、遠慮する必要はないです、アプローチしてください。

それでもなかなかうまくいかないということに対して、今日紹介があったようないろんな隙間を埋めるような組織が色々できているので、海外にいる不登校の親の会なんていうのがあってもいいかもしれないですけど、そうやって新しくニーズに対してサポートを作っていくということがあるといいと思います。

                                                      以上

本資料に関してのお問合せは、ゆいグローバルネットHP問合せフォームよりお寄せください。

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