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「あたりまえ」とは何かを問う当事者の視点

チームメンバーの坂野真理先生(子どものこころ専門医)が、ゆいグローバルネット共同代表 井上孝代先生の新著にコメントを寄せてくださいました。


 「何事にも一生懸命がんばることが大事」「あいまいな表現を使って柔らかく相手に伝える気配りが必要」「空気を読み、さりげなく気づくことが優しさ」・・・ 

 日本に生まれ育ち、そういった価値基準が「あたりまえ」であった生活から、海外に移住してみると、日本では「あたりまえ」だったことが「あたりまえ」にならない現実に直面することがあります。海外在住者が多かれ少なかれ体験するこのような文化の差は、時にとてもストレスになりますよね。 


 発達特性やメンタルヘルスの悩みを抱えるお子さんや大人の当事者の方々が、日常生活の上で感じているストレスは、海外に移住しなくても日常的にこういった異文化体験にさらされている状況と根本的に変わらないと感じます。 

 社会の中の「マイノリティ(少数派)」である当事者の「何かが異常」という捉え方ではなく、文化が違うだけであることを理解し、その視点に寄り添うことは、「マジョリティ(多数派)」で成り立っている社会の「あたりまえ」の価値基準を根本的に問い直すことでもあります。例えば、毎日学校に登校し、宿題をこなし、部活動や委員会活動で活躍し、テストで良い成績を取ることが、私たちがいつも目指すべき目標でしょうか。あるいは、気分の浮き沈みなく、ポジティブな気持ちで過ごし続けることが私たち人間のあるべき姿でしょうか。 


 私たちカウンセリングを行う職業は、自分の内面にある価値基準でクライエントを判断せず、自分の視点をいったん脇へ置いておき、クライエントが持つ視点や価値基準に寄り添い、向き合うことを求められます。クライエントとの様々な会話の中で、相手の視点に立ち続けることは、実に奥深く、自分の立ち位置や「あたりまえ」の基準を問われ続ける作業です。 


 このたび、ゆいグローバルネットの共同代表である井上孝代先生が、統合失調症かつ重度自閉症児の母である永濱檸檬さんとの20年以上に亘る対話を物語にした本を出版されました。20年以上に亘りクライエントと対話し続けるという井上先生の偉業にまずは敬意を表すとともに、永濱檸檬さんが生きてきた人生の物語から、私たちの「あたりまえ」をもう一度問い直す視点を頂けたことに感謝したいと思います。皆さんもぜひ読んでみてください!



井上 孝代 先生(ゆいグローバルネット共同代表)の新著紹介

 『重度自閉症児と共に生きる精神障害者のライフストーリー: 自伝に基づく協働のナラティブ』

 井上 孝代・永濱 檸檬, 2024.02.29, 風間書房




坂野 真理 先生(ゆいグローバルネット チームメンバー)の活動紹介


不登校・発達凸凹の子を持つ親の会



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