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「コロナ禍のストレス 自分に最適な対処法を見つけよう=解決志向アプローチの試み=」アフタートーク

昨年9月に開催したオンラインワークショップ「コロナ禍のストレス 自分に最適な対処法を見つけよう=解決志向アプローチの試み=」にて講師を務めてくださった一般社団法人日本SFA協会の梶原成子先生から、ゆいグローバルネット共同代表の阿部薫さんがお話をうかがいました。


日本語で利用できる相談機関が少ない海外では、自他のリソースを活かして解決に向かうSFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)の考え方が一層役立つと感じられます。



阿部(以下敬称略): 「解決志向アプローチは、とても希望が持てるアプローチですね!」と感想にもあるようにソリューション・フォーカスト・アプローチに「希望のカウンセリング」と言われることがあるようですが、それはどういったところからそのようにいわれるのでしょうか。


梶原(以下敬称略): SFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)の創始者であるインスーとイヴォンヌ(Berg and Dolan (2001))は「SFAは希望と尊敬に関する語用論」だと定義しています。SFAは希望や尊敬をいかに話の中で伝え、実践していくかを行っているアプローチと言えます。例えば、クライアントが私たちの前に現れるのは困難を抱えていたり、物事が思うように進まなかったり、今までやったやり方や対処法が通用しなくなったりということですよね。つまり、希望が薄れて希望なんて感じられないという状態と言えるわけです。そういう中でもこの困難を乗り越えられるのではないか、良い未来があるのではないかといった希望を生み出すことがSFAの大きな要素であるのです。そして、その希望はセラピストとクライアントが一緒になって育てることができるものでもあります。セラピストはクライアントの問題や欠点、原因に焦点をあてるのではなく、クライアントの有能さや解決につながるリソースに焦点を当て、ともに希望が感じられるよう一歩後ろから導いていきます。だから「希望のカウンセリング」と呼ばれるのです。


阿部:ストレス対処法を探すというワークショップの中で、リソース探しに焦点をあてて

ワークをすすめてくださいましたが、リソース探しはソリューション・フォーカスト・アプローチの中で重要な技法なのでしょうか。リソースを探すことでどんないい面がありますか。


梶原:リソースは資源という意味です。リソースには内的なリソースと外的なリソースがあります。クライアントが持っている良い面や能力などが内的なリソース、家族や友人、外部機関などクライアントの周りにある資源が外的なリソースです。


リソースを探すためには、クライエントができていること、頑張っていること、助けになっていること、うまくいっている状況、支えてくれている物や人、活用できていることを聞いていきます。それらのリソースが明確になることで、クライアントの自信や自己肯定感、意欲が高くなるし、解決(クライアントが望む状態)に近づくために何をすればよいかを見つけやすくもなります。例えば、この前のイベントであったように、コロナ禍にあって海外で暮らす人は様々なストレスや困難があったと思います。その中である人が子ども達と安心して明るく暮らすことを望んでいたとしましょう。その時にこのコロナ禍であったとしてもできていること、少し安心できていることを探してみます。それは友達や家族とラインをしている時とか、家にいる子ども達と一緒に料理している時とかかもしれません。そこには多くのリソースがありますね。支えてくれる友達や家族、ラインというツール、一緒に料理ができる子供たちとの関係、料理をする時間。自分にはすでにこんなに多くのリソースがあると気づくだけで気持ちが変わりませんか?またこうしている時は少し安心して明るく過ごせていることがわかれば、もっとラインをしてみよう、子供たちと違うことを一緒にしてみようという発想になったりするでしょう。それが「自分が望む状態」=「コロナ禍という大変な時の中でも少しでも安心して明るく過ごす」ことに近づいていくことになるのです。


またこのようにリソースや強みを探すことでクライアントだけではく、私たち支援者、セラピストにとっても多くの良い面があります。会話や関係がポジティブになりやすく、支援者も希望を感じながら援助することができます。


阿部:また、グループワークでは聞く側のメンバーは否定しないで聴くという教示が

与えられていましたが、これはソリューション・フォーカスト・アプローチの「コンプリメント」技法に通じるものと感じました。コンプリメントとはどういうものか、また相手にコンプリメントすることはどんなふうに良いのか教えていただけますか。


梶原:コンプリメントとはクライエントが語り、感じ、信じていることを支援者、セラピストが承認し、彼らが示している態度を肯定して敬意を表すプロセスである、と説明されています。だから彼らが言っている語りや信じていることをまず否定しないで聴くことは相手を受け入れ敬意を示すということであり、コンプリメントの土台となる態度と言えるでしょう。

コンプリメントを日本語に訳すと褒めるということですが、褒めるという意味だけでなく、認める、敬意を表す、ねぎらうという広い意味を持つ言葉なので、日本語にせず英語のまま「コンプリメント」という語を使っています。

コンプリメントの仕方は色々あります。「わあ、それってすごいですよね。」とか、「そんな風に考えてらっしゃるのですね。」という風に直接的にこちらが感じた肯定的な気持ちや評価を伝えることができます。また「それってどういうことですか?」「どうやってできたのですか?」といった感じでクライエントが語った大事なことを質問という形で深めていくこともできます。先ほどのリソースの話とつながりますが、このようにコンプリメントすることで、クライアントが話しやすくなり、自信や意欲が高まり、思考も広がっていきます。ただコンプリメントは親切にしようとか、おだててこちらの思うようにさせようということではありません。クライエントが大切にしている価値観に敬意を払い望む状態につながることを明確にしていくための技法です。


阿部: SFAのカウンセリングを受けると不思議と思考が広がりますよね。

思考が広がるひとつの役割を果たしているのがコンプリメントということもできるのですね


梶原:はい、そうです。


阿部:他にも時間があったら紹介したかったソリューションフォーカスト・アプローチの考え方や技法があれば教えてください。


梶原:技法は色々ありますが、SFAの核はクライアントが何を望んでいてどういう状態でありたいのかから考えていくということです。望む未来を具体的に描き、そこから今を眺め、クライエントの持つ力を使って支援していくのです。クライエントが今とは違ったどんな状態を望んでいるのか、自分の生活の中に何を見たいのかということを話し合います。二つの語りを想像してみてください。一つは今ある問題や将来の不安や心配をずっと語り続けるものです。もう一つは、「いろんな心配や困難はあるけれども自分はそれを乗り越えて家族とこんな風に過ごしたい」、「周りのお友達とこんな風にやりたい」、「仕事はこんな風にやりたい」というふうな語りです。この二つの語りではどのような違いが生まれると思いますか?望む未来が具体的になればなるほど、今できていること、今あるものに気づき、ここからやれること、できることも見えてくるのです。

SFAではこのようにクライエントの人生に敬意を示し、今あるリソースや強みに焦点を当てながら、クライエントの望む未来を描くことで、次なる一歩を見出していくアプローチです。


ありがとうございました!


※一般社団法人日本SFA協会へのリンクはこちら→https://www.ja-sfa.com/




インタビュー 阿部薫(公認心理師)


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